体感のフシギ
「空気がよどまない」という仕掛け
吹抜けなどで1階と2階がひとつながりの空間をつくり、1階から2階最頂部の間に大きな高低差ができると、上下の室温に差が生じます(上のほうが暑い)。空気は温度の低いほうから高いほうへ移動しますから、1階にある冷たい空気は2階最頂部を目指して動いていきます。これにより、室内の空気は常に動くことになります
爽快!
空気の動きがニブイと、室内が澱んで不快になる
昔の家によく見られた
越屋根
西洋の家にもドーマーと呼ばれる同じような窓があります
「エアコンのいらない家の夏は、
風のチカラで涼を得るのが基本です」
こんなお話をすると、
すぐさまイジワルな質問が飛んできます。
「風が吹かない日はどうするのですか?」
たしかに、風が吹かない日は困ります。
ただし、
エアコンのいらない家は風が吹かない日でも
室内の空気が常に動き続けているので、
意外と不快な環境にはなりません。
これが、質問に対する答えでもあります。
体感温度を改善していく
以下2つのポイントに配慮すると、
たとえ風が吹かない日でも、
室内に常時「弱い風」が吹いている状態をつくり
出せます。
①建物内の上下に温度差をつくって、
「温度差換気(重力換気)」を実現する
②給排気口の位置・サイズを最適化することで
よどみない「給排気ルート」を実現する
その効果は、「体感温度」に表れます。
同じ室温でも、
「気流」や「湿度」の状態によって人が感じる
快・不快に大きな差が出るように、
空気が1カ所によどんでいる室内と、
常に動いている室内では、
体感温度に大きな違いが出るのです。
だから昔の家には、
たとえば「越屋根」という仕掛けがありました。
建物頂部の開口部(窓)を開閉することで、
室内に上昇気流を生みだし、
熱気や湿気をそこからうまく排出していたのです
(排煙、採光にも使われていました)。
この素晴らしい知恵を、
放っておくのはもったいない。
「エアコンのいらない家」もこれにならい、
建物の一番高い位置に換気用の窓を設置します。
さらに。
「冬のしくみ」でもご紹介した
補助冷暖房によるフォローを加えることで、
風が吹かない日でも快適に過ごせる環境が
より強化されます。
通風だけでは涼しさが足りない日は、
「放射冷暖房システム」のスイッチを遠慮なく
オンに。パネルから放射される輻射熱(熱と
いっても夏の場合は「冷たい熱」です)により、
エアコンや扇風機とはひと味違った、
やわらかな涼しさが供給されます。
快適な室内環境を構築する大前提は、
「室内の空気がよどみなく流れていること」。
これが、人間の快・不快に大きな影響を与えている
ことをお忘れなく。
室内の空気が常に動いていれば、嫌なにおいや湿気がこもることもなくなります。オープンキッチンを配置しているLDK、ペットを飼っている家では特ににおいが気になりますね。そこをうまくコントロールするのも「目に見えないデザイン」です