練馬Y邸オープンハウス中継
また1棟、「エアコンのいらない家」が竣工しました。
代表の山田浩幸曰く、「現時点で最も理想に近いものです」。
出来たばかりの家を一般の方にお披露目する「オープンハウス」の当日、
山田みずから、現場でエアコンのいらない家の解説を行いました。
その模様を『誌上オープンハウス』としてご紹介いたします。
たまに飛び出す質問は、現場にいらした方からの素朴な疑問の数々です。
2015_11_18
構成:西田結花(ライター)
いつも南側の窓から
山田
本日はお忙しいなか、「エアコンのいらない家」のオープンハウスにお越しいただきまして、ありがとうございます。
まず初めに、この家のコンセプトからお話しておきましょうか。この家のコンセプトは、「なるべくデザインしないこと」です。
デザインしないデザインとでもいいましょうか、できるだけ「普通」であることにこだわって設計した住宅です。
住宅の核となる部分は私の設計ですが、間取りや収納の使い勝手といった生活全般にかかわる細かな設計は、インハウス建築計画の中西ヒロツグさん(一級建築士)にお願いいたしました。
私はこれまで、設備設計者という立場で「エアコンをなるべく使わない家」の設計に数多く関わってきました。
それらの住宅も、きょうご覧いただく住宅もそうですが、設計はいつも意匠設計者の方と組んで行うのが基本です。
ただ、これまでの住宅は「いかにもデザイナーズ住宅です」という雰囲気の、ややシャープなデザインに片寄ることがほとんどでした。
それはそれで面白いものができるのですが、そういう住宅ばかりが続くと、「エアコンのいらない家=デザイン的に尖った家」という印象を与えてしまいそうで、少し心配になる部分がないわけでもありませんでした。
そろそろ、デザイン的にノーマルなエアコンのいらない家をつくってみたいというのが、正直な思いでした。
そんななか、ちょうど良いタイミングでいただいたのが、今回の設計依頼です。
お施主さんご自身もシャープなデザイン住宅を求めていらっしゃるわけではありませんでした。
そんなわけで、「なるべくデザイン要素を入れない」「なるべくコストを抑える」。そのような方針で設計させていただいたのが、これからご覧いただく家です。
――
お施主さんは何人家族ですか?
山田
ご夫婦とお子さん2人の4人家族です。
延床面積は100㎡ちょっとですから、サイズ的にもノーマルな一般住宅といえるかと思います。
寒い冬を、いかに暖かく過ごすか
では、具体的な説明に入らせていただきます。
まずは、こちらの南側の窓をごらんください。
この窓が、エアコンのいらない家の生命線です。
エアコンのいらない家の設計は、いつも冬から考えます。「寒い冬をいかに暖かく過ごせるようにするか」という観点です。
その第一歩がこの南側の窓で、ここから太陽の熱をどれだけ取り込めるかが設計のカギになります。
一般の住宅でも、これは同じですね。
日当たりの良い南側に大きな窓をとって、そこにリビングやダイニングを配置するのは、ごくごく当たり前の設計手法です。寒い北側に、わざわざ大きな窓をつける家はおそらくないでしょう。
窓の方角は真南を向いています。
かつ、日差しをさえぎる深い軒を出したり、窓の上に長いひさしを付けたりしていませんので、太陽が出ている日中は、常に太陽の熱が室内に入ってきます。
――
窓ガラスは何を使われていますか?
山田
これは、普通のペアガラスです。
最近はガラスにもいろいろな種類がありますが、このガラスはどの住宅にも使われているような一般的なペアガラスです。
太陽の熱を取り込むのが第一ですから、ペアガラスといっても「遮熱タイプ」のガラスにはしていません。せっかくの熱をさえぎっては意味がありませんからね。
このように、昼間は南側の窓からできるだけたくさんの日差しを入れます。
しかし夜になれば、逆に取り込んだ熱がなるべく逃げないように、家全体を「ラッピング」します。
電気ポットにたとえるなら、昼間は一生懸命「沸騰」させて、夜になったら「保温」に切り替えて熱をキープする。そんなイメージです。
そのために必要になるのが、この断熱ブラインドです。
日没後は、このように断熱ブラインドを下ろして、取り込んだ熱が外に逃げないようにしてやります。
断熱ブラインドの断面は、こうなっています。
ブラインドの中に空気層をつくることで断熱性能を高めているんですね。
ちょっと大げさな言い方になりますが、このブラインドを下ろすことで、この窓が夜になると「壁」に変わります。
室内の熱が外に逃げていくスピードは、壁よりも窓のほうが断然速いわけですが、このブラインドを下ろしておくと、そのスピードが遅くなり、窓の断熱性能というより、壁の断熱性能のほうに近づいていくイメージです。
それくらい効果があるツールといえます。
断熱ブラインドの断面形状
熱を逃がさないという意味では、必ずしも断熱ブラインドである必要はありません。
障子やふすまを使っても、室内を保温状態にする効果は十分あります。
ただ、障子やふすまは、うまくデザインしないと和風のテイストが強くなってしまうので、今回はデザイン的な意味合いからこのブラインドを選択しました。