
練馬Y邸オープンハウス中継

高原の避暑地に遊びに行ったような
山田
では、いよいよ皆さんが気になっているであろう、この巨大な物体のご説明をいたします。
これは、「HR-C」という名前の放射冷暖房機です。一般の住宅でエアコンやファンヒーターに相当する空調機器がこれになります。
このパネル一枚一枚の中に冬は温水、夏は冷水を通すことで、パネルから放射熱が発生して、室内の温度が快適に調節されるしくみです。

――
オイルヒーターみたいなものですか?
山田
まあ、オイルヒーターみたいなものと言っていいと思います。
ただ、オイルヒーターというと一般には冬の暖房をイメージされる方が多いと思いますが、この機器が威力を発揮するのはむしろ夏です。
夏はパネルの表面温度が10℃くらいになって、冷たい放射熱が発生します。と同時に、パネルの表面が結露します。パネル一枚一枚が水で濡れた状態になります。
――
結露するということは、部屋が乾燥するわけですか?
山田
乾燥といっても高温多湿な夏の乾燥ですから、むしろ除湿と言ったほうが的確ですね。
そういう意味では、冷房機でありながら除湿機でもあるわけです。
そのおかげもあって、身体に感じる快適さがエアコンとは全然別物になります。
――
結露した水はどうなるのですか?

夏に結露した状態(この家の機器とは別のものです)

山田
この下の孔から落ちて、雨水の排水経路から下水道に排出されます。
――
この機器は、冷風や温風が出るわけではないんですよね?
山田
ええ、風はまったく出ません。
出るのは主に放射熱です。
それが、エアコンとはまったく異なる涼しさや暖かさをもたらす理由です。
私は仕事柄、これまでさまざまな空調機器を体験してきましたが、気持ちよさという点ではこの「HR-C」がずば抜けてよかったですね。
夏は「高原の避暑地に遊びに行ったような涼しさ」とでもいいましょうか。非常に涼やかな気持ちにさせられる稀有な空調機器です。
――
この家の冷暖房機器は、基本的にこれ1台だけですか?
山田
そうです。
この1台で家全体の温度調節をまかなっています。
あとは、先ほどの集熱ファンや断熱ブラインドが補助的に活躍します。
ただ、勘違いされると困るので一応説明しておくと、「エアコンのいらない家」というのは、エアコンの代わりにこの「HR-C」のような別種の空調機器を使う家、というわけではありません。
基本は、空調設備に頼らなくても快適な室内環境になるような設計をすることが大前提です。
そのうえで、どうしても暖かさや涼しさが足りない場合は、この機器を稼働させてくださいという考え方です。
これまで、この放射冷暖房機を採用したお宅は何軒もありました。
皆さん、実際どれくらいこの機器を使っていらっしゃるかと言うと、どちらかといえば私が想定した以上には使われていません。
使うとしても、夏場の本当に暑い時期だけとか、冬場の本当に寒い時期だけとか、その程度のようです。
そもそも、「エアコンのいらない家」に興味をもたれる方の大半が、「今年はどれだけ空調機器を使わずにがんばれるか」に挑戦していらっしゃるような方たちで、こちらとしては「そんなに無理しなくてもいいじゃないですか」と心配になるのですが、「いや、山田さん、機械を動かさずにどこまでいけるか……これは自分との闘いなんです」って、そんな感じでがんばっていらっしゃる方もいますので(笑)、余計にこれを動かす期間が短いのかもしれません。

放射冷暖房機の説明はこれくらいにしまして、今度は2階に上がってみましょう。