練馬Y邸オープンハウス中継
いま、空気が動きだしました
山田
2階の子供部屋に上がってきました。
この部屋は、先ほど見ていただいた1階南側の窓から入ってきた風が、吹抜けを経由して2階北側の窓を通って抜けていく、メインの通り道となる部屋です。
いま、子供部屋上部の窓(北側)を開けています。
ここが、夏の風の出口になります。
子供部屋から吹抜けを見下ろす
山田
はい、窓を開けました。
少し開けただけですが、いまここに立っている私には、空気が少し動いているのが感じられます。
皆さんはいかがですか?
――
(一同うなずく)
山田
おそらく今日は、外の風はほとんど吹いていないと思います。でも、1階と2階に温度差があるので、窓を少し開けただけで空気が動き出したんです。
いま、動いていますよね?
最近は『エコな家』がブームのようで、住宅の広告などでも、「風が通り抜ける家」というようなキャッチフレーズをよく見かけます。
ただ、外で吹いている風が室内に入ってきて、また外に抜けていくというのは、じつは住宅の設計としては最低限のマナーなんです。
それは、できて当たり前だろうというレベルです。
逆に、窓を開けているのに風が入ってこない、風が抜けもしない家というのは、ある種の「欠陥住宅」といえなくもありません。
そういう家は、夏場はエアコンを止めたとたんに不快な状態に陥ります。
その点、「エアコンのいらない家」の夏は、外でまったく風が吹いていない日、無風状態の日でも、家の中では風がすーっと吹いている状態をつくり出すのがテーマです。
専門用語で「重力換気」というのですが、そのために必要な窓がこの北側の窓です。
先ほども申しましたが、暖かい空気は自然と上に昇りますから、昇った先の窓を開けておけば夏はそこから勝手に熱気が抜けていきます。
これは昔の日本家屋ではみんな当たり前のようにやっていた工夫です。そうしないと、暑くて家の中にいられなかったんですね。
だから、特殊な仕掛けでもなんでもありません。
昔の人がいまの話を聞いたら、「山田はなにを偉そうに当たり前の話をしているのだ」と、お叱りを受けるような内容かと思います。
それくらい基本的なことなんです。
子供部屋から吹抜けの方向を見る
寝室の北側上部にある風抜き用の窓(横長のもの)
それから、こちらが冬場に活躍する集熱用のダクトです。
上に孔があいているのが見えると思いますが、ここから暖かい空気を吸い込んで、先ほどご覧いただいた床下まで下ろします。
ちなみに、ここは寝室になりますが、この部屋の窓も先ほどご覧いただいた外付けブラインドがついています。
室内側には断熱ブラインドもあります。
外付けブラインド、断熱ブラインド、あと、先ほどの放射冷暖房機、どれもコスト的には決して安いものではありません。
けれど、それらは皆、住まいの快適性を担保するうえでは絶対に妥協したくない部分でもあります。
だから、「エアコンのいらない家ってどういう家ですか?」と聞かれれば、「そういう部分にお金をかける家です」とお答えしていいのかもしれません。
住宅の基本となる部分――何を基本と考えるかは人それぞれでしょうが――をしっかりつくる。
これが、私たちの家づくりに対するスタンスと思っていただければよいかと思います。