The first floor - 2
無垢材とステンレスの相性 篇
豚の細切れフローリング
小沢
いきなり洗面・脱衣室の話になってしまいましたが、この家の中心であるリビングダイニングは、ごらんのとおりの雰囲気です。「シンプル×ナチュラル」を念頭に、カフェっぽさ、北欧テイストみたいなものも若干意識して加えました。建具も間接照明も極力シンプルに納めています。
床材はオークの無垢材にUV塗装です。
無垢材ですが「短尺もの」を使用することでなるべくコストを抑えました。オープンハウスにいらっしゃった方々には、「要するに豚の細切れみたいなフローリングなんです」と説明していましたが、私が言わんとすることは分かっていただけたようです。
床材はコストを抑えましたが、代わりにキッチンにはある程度コストをかけています。
ヤジマのオールステンレス製のシステムキッチンを入れました。いまはオールステンレスといっても薄板を張っているだけのメーカーも多いですが、ヤジマは天板も厚くて非常に風格があります。
お施主さんの要望は、材料全般に「有機的なものを使用すること」が基本でした。ですからキッチンも、当初は木製で製作しようという案が出ていたのですが、「無垢」のイメージでつないでいくと必ずしも木でなくてもいいのかな、ステンレスでも悪くないなというふうに考えも変わっていきました。メンテナンス性、清掃性を考えれば、むしろステンレスのほうがメリットが大きいかもしれません。
戸建住宅を新築される方は子育て世代でもあることも多く、ほとんどの方が「有機的な材料、肌になじむ質感が希望だけれど、子育て仕事に追われる日々なのでメンテナンス性も重視したい」と言われます。
同時に、住まいとそこに住む人が一緒に歳を取っていける、少しずつ味わいのある空間をつくり上げていける素材、仕上げという意味で検討していくと、私は「無垢材(UV仕上げ)×ステンレス」という組み合わせが一つの模範解答なのかなと思っています。
こうして出来上がってみると、やはり無垢材とステンレスは非常に相性がいいなと感じますね。
放射冷暖房機は階段の下に
小沢
エアコンのいらない家の標準装備といってもよい「放射冷暖房機(HR-C)は、階段下に設置しています。これが、暑さ寒さを機械的に補助する役割を果たします。寸法と配置は山田さんに完全におまかせでした。
当初は玄関を入ってすぐの位置に設置する予定でしたが、プランニングの過程でこの場所に落ち着きました。階段下に置いたのは、ここから発生する暖かい熱が階段を通って2階まで伝わっていく効果もねらっています。
数日前、季節はずれの大雪が降りました。
その日、この家で稼動している冷暖房機器はこれ1台でしたが暖かさは十分すぎるくらいでした。玄関ドアを開けて家の中に入った瞬間、「えっ?」というくらい暖かかったのでちょっとびっくりしました。
空調設備という意味ではもう一つ、サーキュレーションシステム(集熱ダクト)の吹き出し口がここにあります。
2階に溜まる暖かい空気を集め、ダクト内を通して1階の床下から吐き出させる仕組みです。2階のダクト横に温度センサーがついているので、設定温度になると自動的に集熱ファンが動き出します。吹き出し口をカウンター下に組み込んだことで、存在感はほぼなくなっているのではないでしょうか。
1階の説明はだいたいこれくらいですが、最後に1階の窓について補足しておきます。
この家は1階の東西面にほとんど窓を設けていません。
夏の日差しをさえぎるという意味もありますが、隣家の換気扇との位置関係から窓を設けにくかったという理由もあります。
ただ、窓がないとどうしても室内に圧迫感が出るため、最終的には小さな高窓を付けることにしました。
いま、こうして出来上がった状態を見ると、やはり小さくても窓は付けておいたほうがいいなと思いました。
なお、東西面からの通風という意味では、階段の途中に設けた縦長の窓が「ウィンドキャッチャー」としての役割を果たします。
1階の説明はとりあえずこんなところです。
次は2階に移りましょう。
(つづく)2017-6-14