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チームワークは、会社の枠を越えて。
interview025

05

もし、自宅がエアコンのいらない家だったら

――

「エアコンのいらない家」についてうかがいます。

そもそも、山田浩幸さんとの出会いはどういうかたちだったのでしょうか。

 

大原

20年くらい前でしょうか、ある設計事務所の仕事で設備設計を担当されていたのが山田さんでした。

そこで知り合って以来、いろいろな物件でずっと一緒に仕事をさせてもらっている仲です。

当社が工務店組織となって50年目のとき、その設計事務所さんと山田さん、その他の方と4人くらいで発起人になられて、50周年の記念パーティーを開いてくださいました。

明治記念館を借りてかなり大きなパーティーだったのですが、そういうお付き合いがずっと続いています。

――

「エアコンのいらない家」は、主に山田さんと大原さんが中心となってチームを組まれているわけですが、最初に「エアコンのいらない家」のアイデアを聞かされたときはどう思われました?

 

大原

すぐに、「これはいい」と思いましたね。

家の中を通る風の流れを良くして、機械設備を極力使わずに快適な住宅をつくるという考えには、まったく賛同します。

山田さんの発想、そこに私の経験もプラスして、1棟1棟議論しながらつくりあげていけば、かなりレベルの高い住宅になるはずだと思いました。

 

――

住宅の価値をどこに求めるかは人それぞれですが、「心地よく暮らせる」という価値を毛嫌いする人はまずいません。

ただ、文字どおりの「心地よさ」を住まい手に実感として与えられる住宅というのは、口で言うほど簡単にできるものではありませんよね。

 

大原

たとえば、「空気の流れが良い」という面だけに着目しても、これは小手先の技術だけでは実現できません。

最初期の計画段階で、建物の形なり、窓の取り方なりをしっかり考えておかないと非常に難しい。

たとえ理屈では分かっていても、実際の図面に落とし込んでいく作業は、一朝一夕に出来ることではないと思います。

仮に、「エアコンのいらない家」の考えの一部を取り入れて設計しようとする設計事務所、工務店があったとしても、おそらくそれはうまくいかないでしょう。

――

これまでたくさんの住宅を施工された大原さんから見て、「空気の流れが良くないな」と思われる住宅は、いくつもあったのではないですか?

 

大原

ありましたね。

こちら側の壁面にもう少し大きな窓を取ったほうがよいのではと感じた家など、ずいぶんありました。

 

――

そういう家って、その後どうなっています?

 

大原

まあ、「それなりに」ですかね(笑)。

そこは住まい手の考え方次第ですから、まったくダメとは言い切れません。

住まい手が「これでもいいんだ」と言えばそれでいいわけですから。

自分が住むなら、こんな家がいい

――

いま、大原さんご自身はどのような家に住んでいらっしゃるのでしょうか。

 

大原

私はずっと賃貸のマンションです。

きょうお話ししたこととはまったく関係ない暮らしをしてきたわけで、うちの女房には「で、うちは建つの?」とずっと言われ続けてきました(笑)。

さすがに最近はあきらめてくれたようですが……チャンスがなかったんですよね。

チャンスがあれば建てたかもしれませんが、いつもヒイヒイ言いながら仕事ばかりしてきたせいで、なかなか自分のほうまで手が回らなかったです。

 

――

もし、これからご自宅を建てられるとしたら、こんな家がいいなというイメージがありますか?

 

大原

やっぱり、山田さんがやられているような風の流れの良い家がいいですね。

昨年竣工した「練馬Y邸」はとても良い家になりました。

現場をチェックしながら、自分もここに住んでみたいな、自宅がこんな家だったらいいなと思いましたもの。

本当に今後自宅を建てるチャンスがあるなら、木造のそういう家がいいと思っています。

家はどこにお金をかけるべきか?

――

最後に、お金の話を聞かせてください。

家づくりにおける「お金の配分」です。

お客さんに、「家というのはどこにお金をかけるのがいちばん良いですか?」と聞かれたら、大原さんならどのようなアドバイスをされます?

 

大原

予算が無尽蔵にあるなら、好きなようにつくられてよいと思います。

でも、予算に限りがあるなら、まずは骨組み、そして建物全体の基本性能、ここにお金をかけるのがよいと答えるでしょう。

それ以外の部分は、あとからどうにでもなります。

たとえばキッチンは、いくらでも取り替えのきく設備機器ですから、当初の予算が厳しければ、最初は安価でそこそこ使える製品を入れておけばOK。

数年後、お金に余裕ができたら好みのものに入れ替えればいい。そういう割り切りも大切です。

 

――

とはいえ、住宅雑誌などを見ていると、たいていはその逆のほうに目がいきますよね。

奥様方の関心はほとんどキッチンですし。

 

大原

そうかもしれません。

 

――

お金の配分以外で、良い家をつくるための条件みたいなものがあれば、教えていただけますか?

家づくりがうまくいく建て主さんの共通点とか?

 

大原

共通点という意味では、「いろいろなことに理解のある建て主さん」は、結果として良い家を建てられているように思います。

 

――

と、言いますと?

 

大原

たとえば、自分が家というものに何を求めているのか、ご自身のなかではっきりしている方と、そうでない方では、明らかにできる家が変わります。

 

――

理解があるというのは、家づくりに対する理解であると同時に、自分自身への理解という意味ですか?

 

大原

そうですね。

その昔、こういう方がいらっしゃいました。

設計者も施工者も建て主さんも、「シンプルな家」というイメージで計画を進めていた家があったんです。

しかし、あるとき奥様から、「私はこういうものが好きなのですが」と見せられたサンプルが全然シンプルではなかった。

花柄の壁紙とか、ふりふりの付いたカーテンとか。

シンプルな家がよいとおっしゃっていながら、じつは真逆の趣味をお持ちだと分かり、途中から大慌てで設計をやり直したことがあります。

――

その奥様も、悪気があったわけではないのでしょう。

計画が進むにつれて、自分の求めている家のイメージがだんだん分かってきた。

 

大原

そうだと思います。

そういう方もいらっしゃれば、本当はもっと前に言っておきたかったのだけど、チャンスがなくてなかなか本音を言い出せなかったという奥様もいらっしゃいました。

ま、そのときは設計者のリードが悪かったのですが。

 

あとは、要望と予算がうまくバランスしていれば完璧でしょうね。

要望はこんなにあるのだけど、予算はこれだけしかないとなると、いくら家のイメージが固まっていても落とし所を探すのが難しくなりますから。

 

――

その点、「エアコンのいらない家」はあらかじめどういう家かがはっきりしていますから、お客さんのほうもイメージしやすいでしょう。

 

大原

そうですね。

あとは、予算の折り合いさえつけば、長く快適に住める、本当に良い家ができると思います。

 

――

なにしろ、施工のほうは折り紙つきですからね。

今日はどうもありがとうございました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました)

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